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『資産形成は大人になってから』
そんな常識が大きく変わろうとしています。
金融庁は、少額投資非課税制度(NISA)の対象を未成年にも広げる方針を打ち出しました。
さらに高齢者に人気の毎月分配型投信を対象に含め、機動的な運用を可能にする『スイッチング』も容認する方向です。
これが実現すれば、NISAは『生涯を通じて使える投資制度』に進化します。

投資は『始める時期』と『やめる時期』の両方が重要です。未成年から高齢者まで利用できる制度設計は、日本人の資産形成にとって大きな転換点になりそうです。
NISA拡大で変わる3つのポイント
未成年も利用可能に(ジュニアNISAの後継)
現行制度では18歳以上が対象ですが、要望では18歳未満にもつみたて投資枠を解禁する方向です。
これにより、2023年に廃止された『ジュニアNISA』に代わる新たな仕組みとして、教育資金や早期の資産形成をサポートする制度が生まれます。

親世代が子どものために投資口座を開き、長期積立を始められるようになれば、資産形成の時間の力をフルに活かせます。
高齢者ニーズへの対応(毎月分配型も対象に)
金融庁は、高齢世代の取り崩しニーズを考慮し、毎月分配型投資信託などもNISA対象に含めることを要望しています。
毎月一定の分配金が出る商品は、年金の補完や生活資金確保に役立ちます。
ただし、分配金の一部は元本取り崩しにあたる場合もあり、『安定収入』と誤解しないよう注意が必要です。

分配型は人気商品ですが、実際には『利息』ではなく『取り崩し』になるケースも多いです。投資家に正しい理解が広がるかどうかが課題です。
スイッチングの容認(非課税枠を維持)
もう一つの焦点は、年内でのスイッチング容認です。
例えば、NISAで購入した株式投信を売却し、同年内に別の投信に乗り換える場合でも、非課税枠を復活させて使えるようにする案が検討されています。

相場は動き続けます。環境に応じて資産配分を組み替えられるようになれば、投資家にとって攻めと守りの切り替えがしやすくなります。
現行NISAの利用状況と課題
- NISA口座数は2647万口座(2025年3月末時点)と過去最高を更新。前年から14%増加しました。
- それでも欧米に比べて投資比率は低く、日本の家計金融資産の半分以上は依然として預貯金。
- 金融庁は『貯蓄から投資へ』を加速させるため、年齢制限や商品制限の緩和を進めようとしています。
NISA改正で注視すべき3つの論点
- 未成年口座の管理ルール:親権者による管理、贈与税の扱いなど透明性の確保。
- 毎月分配型の適正利用:元本取り崩しリスクの理解が不可欠。
- スイッチング条件:利用回数や対象範囲をどう設計するか。短期売買助長を避けつつ利便性を高める必要があります。
今後のスケジュール
- 8月末:金融庁が税制改正要望を正式提出
- 年末:与党税制調査会で協議・取りまとめ
- 2026年通常国会:関連法案の提出・成立を目指す
NISA改正に向けて投資家が今できる準備
- 家族単位での教育資金積立プランを検討する
- 老後資金は分配型商品のリスク特性を理解したうえで検討する
- スイッチング解禁を見据え、リバランス戦略を事前にシミュレーションしておく
NISA改正まとめ
金融庁の要望は、NISAを『未成年から高齢者まで一貫して使える制度』へと進化させる大きな一歩です。投資家にとっては、制度が確定する前に家計全体の積立・取り崩し戦略を見直す好機となります。

制度改正は『発表から実行まで』のタイムラグがあります。今から準備する人ほど、その恩恵を早く享受できるでしょう。





